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基本情報技術者試験合格

2002/11/16:久世紀弘






結果発表は担任に呼び出される形で行われました。

浮かれて返って来る者、納得して席に座る者、無念の表情を残す者。

友人の内、数人は事前にネットで合否を確認している人も居ました。

僕は情けないコトですが、合否を見るのが怖くて見ていませんでした。

既に自分の結果を知っている者は心穏やかに。

不安で確認出来なかった者は担任の言葉を不安に待つのです。

そして友人の内、数人が堕ちました。

順番に呼び出され、僕の席は真ん中の方。

堕ちた友人が言います。

「冬休みが終わったら、学校辞めるわ。」

彼とは最近、馬鹿な話を良くしていました。

常にポジティブに前向きに馬鹿な彼が、真面目に語るのです。

「俺は堕ちても、まだ、ここに居るだろうな。」

確かに堕ちれば、次など無い… そう考えた時も何度もあります。

ですが、辞めた後にこの歳で何が出来るのか。

僕は一個下の彼より大人だったのでしょう。

一度退学し、浪人を経験した分だけ。

浪人し、予備校へ通ってから大学へ行くと言う彼。

僕は甘いんじゃないかと思いました。

僕も彼も、専門学校でそれとなく遊んでしまっています。

その状態で浪人したらどうなるか、目に見えるようでした。

偶々、僕より彼の方が遊んでしまっただけ。

「俺はお前より勉強意欲が無かっただけさ。」

どちらでも同じコトです。

つまり学校を辞める、そう言い張る彼を引き留めるコトは出来きなかったのです。

説得するだけの力がありませんでした。

何故なら、彼と同じような考えが少なからずあったからです。

複雑な心境の中、自分の番が来ました。

「結果は見た?」

「いぇ。」

「危なかったね、快挙だよ。」

「そうですか…」

結果は、ギリギリだったにせよ合格でした。

そして堕ちた彼はギリギリで堕ちたのです。

「次はソフトウェアだけど行ける?」

「いぇ、俺は…」

結果を出すと先へ進むのでしょうか。

先へ進むコトで資格を取る、そんな良いコトでしょうか。

資格を取れたコトより友人と離れる痛みの方が大きいのです。

最終的にシスアドよりソフトウェアの方が向いてるだろうという担任の考えにより、

次の目標はソフトウェアとなりました。

受かるとは思えません。

受かりたいとも思えませんでした。

漠然と、ただ道が勝手に敷かれただけ。

―――教室へ戻る際、自然に顔がにやけてしまいました。

嬉しい。

そうですね、長かった試験勉強が実り嬉しかったです。

ですが、同時に自嘲もしてました。

堕ちた彼が居るのに、自分は喜んでいる。

「受かったぜ。」

「おぅ!良かったじゃん!」

席へ着くと、更に納得できない状況がありました。

受かった自分より彼の方が明るいのです。

彼は持ち前のポジティブさで一つの区切りを付けていました。

変な話ですよね。

僕は浮かれてられる気分じゃないのに、彼は平然としている。

こんな時でも考えてしまうのは、自己PR。

その人の良さ。

彼の良い所は、決して後ろを振り返らずに前に進むコト…

僕の良い所は、世話好き… 余計な分まで心配してしまうコトでしょう…

良いコトかは解りませんが、何故かそんな考えが浮かびました。



何が正しく、何が間違ってるかなんて誰にも判断出来ない。

だからこそ、人はそれぞれの分岐点を歩く。

後悔したとしても、それはその人ではなく誰かの為の後悔であるかもしれない。

少なくともそう願います。






2003/01/08 冬休みが終わった今日。

上の文章を書いてから二ヶ月。

彼は退学届けを提出しました。