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夏の他愛のない出来事

2002/11/08:久世紀弘







この日は重要な日でした。

そう、僕に取っては一大イベント。

MSNで何度かDaizoから話を聞き、実際にMSNで何度か話をし…

そして、今日は―――

Daizoとゴミ氏、その二人を迎えに池袋まで。

ゴミ氏とはお互い顔を合わせるのは初めてでした。

服部珈琲前、佇む白い影。

MSNでした打ち合わせでは全身を白くしてくると話していたゴミ氏。

しかし、その人はジーパンを履いていました。

でも、眼鏡掛けてます。

何となくお嬢さんっぽい…

いや、お嬢さんなのです。

ですが…



紀弘:「オハヨウ!待った待った!?」

他人:「…誰。」

紀弘:「……人違いです、すみません…」



そんな結末は嫌すぎます。

様子を見る事にしました。

物陰から多少なりとも距離を空け、何か言われても言い訳が出来る位置です。

10:00、予定の時間になってもDaizoが来ません。

10:05、予定の時間を過ぎてもDaizoが来ません。

お嬢さんが僕の存在に気付き、多少逃げ腰に。

…僕はそんなヲタ臭いですか。

そうですか、そうですか。

………(目頭を押さえながら

しかし、ここは僕もヲタです。

世間体や自己防衛の為にある羞恥心なんて、かなぐり捨てるべきでしょう。

玉砕覚悟で話を切りだしてみました。



紀弘:「ゴミさんですか?」

ゴミ:「…はい、紀弘さんですか。」



実際は「ゴミさんですか?」なんて訊けません。

MSNメッセンジャーでの名前を使いました。

そこから二人で待つ事になったのです、Daizoを。

…まさか本当にゴミさんだとは…

かなり半信半疑でした。

魅惑の鬼眼、銀縁細フレームの眼鏡、白いスーツ・ズボンの姿。

そう想像していたんですけど。

実際の彼女はお嬢さんで…

落胆?

いや、違います。

イメージと違って驚愕していただけです。

取り留めのない会話。

一般人と話しているようで冷や汗が出てきます。

つまり、「普通に接する」のに気を遣ってしまうんですね(滅

あー会話が、会話が切れるー

次はどんな普通の話題を!?

といった辺りで、ゴミさんが…



ゴミ:「前行ったSMホテルがね?」



良かった。

本当に良かった。

僕は嬉しくて堪りません。

これで会話に困らずに済みます。



Daizo:「ハァハァ、いやぁ、悪い悪い、ハァハァ…」



Daizoが到着したのはそれから五分後くらいです。

呼吸を乱し走ってきた様子のDaizo。

わざわざ遅延証明書まで持ってきてくれました。

粋な計らいです。

さて、前日話し合った計画であれば何処かへ遊びに行こう―――

そうなってた筈でした。

しかし…



ゴミ:「んじゃ行こうか。」



と、駅へ向かうゴミさん。

さっさと電車に乗ろうと言うのでしょうか、というか乗りました。

実は… ネタだったらしいです。

困った人です。

まぁ、速攻で僕の家に向かう…

それも悪くないと思いますよ?

ただ、そういう時は必ず後で後悔するんですけどね、いっつも。



電車では濃い話をタップリと聞きました。

UO… つまりはウルティマオンラインを筆頭に機械語に聞こえる単語をバシバシと。

僕はRagnarokしかネットゲームをプレイしたコトが無いので話が解らないのです。

ちょっと疎外感。

ジェラシー?

途中で会話の流れは危ない方向へ。

ゴミさんの友人方の話へ…

………

……



怖いよぅ。



一時間くらいでしょうか、電車を降ります。

ここからは徒歩で、とバスに乗らずに家まで登山する羽目になりました。

誘ったのは主に僕ですけどね。

観光ガイドのように、とはいきませんが適当に説明を加えながら、ね。

野良鶏や野良兎が居る、とか…

山が見えます、河が見えます、紅い川が見えます―――

あぁぁ!ホント僕の家って田舎じゃん。



灰色の四角い家、着きました。

季節が夏というコトもあり、激しく気温が高いです。

部屋に入るなりクーラーを付け、PCを付けました。

まぁ、PCは基本です。

FLASHを見たり、音楽を聴いたり。

途中DaizoがBMをやりたいと言い出して、暫くはそれを見てたり。

で、ここまでは全然問題無かったんですよ。

ぶっちゃけて言って、嵐の前の静けさと言いますか。

問題は… そう、アレですよ。

女性が居て、男性が居て… と来れば?

つまり―――

化粧。



ゴミ:「Daizoって顔綺麗だよねー」

紀弘:「あぁ、そういえば顔立ち綺麗ですね。」

Daizo:「ヤメレ。」

ゴミ:「化粧なんて似合いそう。」



―――Daizo、化粧をされる。



ゴミ:「ほら、綺麗。」

紀弘:「うわーッ!」

Daizo:「ぎゃー」



―――Daizo、口紅が似合う。

えっと。

拭うコトは許されませんでした。

鏡で自分の姿を見て更に絶叫。

そのまま彼は顔だけ白く、ラメ入りの紅い唇が艶めかしい漢に。

ウフフフと不適な笑いをしながら化粧を施すゴミさんが印象的でした。



さて、第二の問題とでも言いましょうか。

この日はまだまだ荒んだ出来事が続くのです。

確かにDaizoも化粧をされたくらいではどうってコトはありませんし、

僕としても仲睦まじい二人じゃないかAHAHAHAHAHAと笑っていましたよ (´・ω・`)

だけどね。

うん、だけどね。

不味いだろそれは、という出来事もあったんです。

―――部屋にあったウィスキーが見つかってしまいました、ゴミさんに。



ゴミ:「飲んで良い?」

紀弘:「………」

ゴミ:「飲んで良い?

紀弘:「okです、どんぞどんぞ…」



こんな感じでゴミさんの手に酒が。

当然、回しのみする羽目になります。

見事、ストレートです… どうしましょう?

ゴミさんは非常に酒が強いそうで、負け知らず。

逆に僕は酒が弱いんです…

ビール一缶でフラフラですよ。

取り敢えずチビチビと口を付ける程度に止めました。

ところが… あぁ、そういえばここからでした。



父上:「はい、いらっしゃい。」



父上が珈琲とお菓子をお盆に乗せて持ってきてくれました。

まぁ、これで救われると思ってたんですが当然間違いな訳で。

父上が消え、僕等がPCに夢中になってる間。

この一大事は起きたのです。



ゴミ:「飲んでみて?」

紀弘:「はいはい。」



ゴミさんが差し出してくれた珈琲。

有り難く頂戴しました。

ゴクゴク

………

ん?



紀弘:「普通の珈琲じゃないんですか?」



ゴミさんはニヤニヤしてます。

ゴクゴク

………

んん!?



紀弘:「何か… 酒臭くないですか?」



やられました!

ゴミさんが、珈琲に細工を。

細工を!!

―――詳細はこうです。

珈琲にウィスキー

更にお盆の上に乗っていたお菓子…

珈琲ゼリーだったんですけど、それにもウィスキーが!!!



紀弘:「こ、コレ… どうするんです?」

ゴミ:「食べて♪



まぁ、こうなるんですけど。

こうして僕とDaizoは酒が弱いにも関わらず、強引にアルコールが入ったのでした。

この日思ったコト。

魔女の宅急便、とか。



―――と。

話は変わり、18禁ゲームをプレイしようという話になりました。

確か「見たい」と言われた気がします(多分

とにかく… 経緯は忘れましたが、そういうコトになったんです!!

ですが、エロゲーといえども数多く僕は所有しています。

何にしようか迷う所です。

ゴミさんもいるコトですし、出来れば簡単にクリア出来るようなゲームを。

僕は「森のにゃんこ」を選択。

可愛い猫耳ヘアバンドを付けた似非子猫ちゃんがロリっぷり全開で―――(略

しかもフルボイスで黄色い声どころか、檸檬色の可愛気ある声が沢山―――(略



雛:『にゃんこさん、噛んじゃ駄目ですぅ!』

にゃんこ:『雛ちゃのここ、沢山出てきたよぉ〜わぁ〜』



………

……



ぼ、僕は何を―――

シナリオのあるゲームならいざ知らず、エロのみのゲームを流すとは…

あぁ、これはいけません。

いけません、いけません。

早く終わらせなければ、早くクリックしてクリアしなければ!

僕は躍起になっていたんでしょうね。

うん、そうです。

そうに決まっている。



コンコン



ドアのノック音。

全員の顔が引きつったと思います、特に僕が。



紀弘:「!?」

Daizo:「!?」

ゴミ:「!?」

にゃんこ:『雛ちゃん、も―――』

雛:『あ〜ん!―――』



な、何が!?

妹が入ってきました―――

ゴミさんと同い年の妹が!

その時の僕の行動は迅速だったそうです。

瞬間的な速さでモニターを消したのです。

僕自身、空を切る指の感触を覚えているくらいですから相当速かったのでしょう。

しかし…

モニターを消してもフルボイスのゲームはスピーカーから音声が流れます。

やばい!

しかもスピーカーの電源はスピーカーの裏側にあるのです。

とてもじゃないですが間に合いません。

思考する暇もなくPCの主電源を落とそうとしました。

ですが…

僕のPCの主電源は一秒や二秒では切れません。

きっちり五秒以上かかります。

そのまま音声は流れ続け―――

僕は主電源のボタンを押したまま妹の方を見て硬直してしまいました。

冷や汗が出てきます。



にゃんこ:『―――っと舐め舐めしていぃ?』

雛:『―――もぅ止めてぇ〜!!』

妹:「これ、紀弘の服。」

紀弘:「…あ、あぁ… お、置いといて…」

妹:「じゃ。」



バタン



紀弘:「………」

Daizo:「クックックック…」

ゴミ:「…バレちゃったねぇ〜」

紀弘:「……ぎょわぁぁぁぁあ!!い、一生の不覚ぅぅううぁあああ!!」



思わず頭を抱え、ベッドに俯せで項垂れてしまいました。

ゴミさんとDaizoからは「ALT+F4の強制終了すれば良いのに」と言われる始末。

そうです、確かにそうなのです。

ゲーム自体を消せばどうってコトは無い筈なのに、パニくっていたのです。

もしくはスピーカーの音量を下げるとか他にも方法はありました。

何故気付かなかったのか、あぁぁぁ今でも悔やまれます!

僕の狼狽え方は見てて面白かったそうです。

妹と何と顔を合わせれば良いのか、憂鬱でした。

…ちくしょう。

(因みに、このコトはその日の間に忘れました…)



取り敢えずある程度落ち着いてくると、父上に映画を観せて貰うコトにしました。

プロジェクターを使ったスクリーン投影です。

何を観るか選ぼうと色々と提案します。



紀弘:「トゥームレイダーはどう?」

ゴミ:「それ映画館で観たよ。」

紀弘:「ロード・オブ・ザ・リングは?」

Daizo:「あぁ、観たねぇ。」



他にも十数本挙げたのですが…

結果的に解ったのはゴミさんが無類の映画好きというコトと、

全員で観てない奴となると存在しないのかも、ってコトでした。

選択に困っていた頃、父上のお客様が一言。



客:「オーシャンズイレブンなんて面白いよ。」



ブラッドピットが出演する映画で、DVDでは最新作でした。

勿論、僕もDaizoも観ていなかったのですが… ゴミさんは既に観ていたりして。

一応、これが妥当だろうという話でソレに決まりました。

…で。

この作品、序盤が結構長いんですよ。

アクションもシナリオも無く、ただ説明のように準備が進んでいく…

つまり、初め面白くありません。

当のゴミさんや、Daizoも面白くなさそう。

というか僕が面白く無いと感じてる。

酒が入ってるから眠気も最高。

そうこうしているうちに、ゴミさんの帰宅時間が来てしまいました。

映画、中盤に入らず。

フラフラしながら彼女をバス停まで送り、見届けます。

何か悪いコトしたなぁ、って感じでした。

家に戻り、勝手に進んでいた映画を途中から観ます。

丁度中盤辺りでしたか。

漸くアクションとか入り始めたりして。

むしろ盛り上がってきて。

わぉ、そこそこ熱いじゃないの!

という感じで満腹的に終わりました。

当然、父上には「序盤長くて今一、あのお客さんに騙された!」と言っておきました。



彼女が帰った後、部屋は面白いコトになっていました。

一つ、酒入り珈琲ゼリーが形を崩さずに残っているのです。

一つ、酒入り珈琲ゼリーが一口食べたであろう跡を残して存在してるのです。

一つ、酒入り珈琲ゼリーが半分食べた跡で残っているのです!

あぁ、勿体ない。

貧乏なんですよ、ウチは… 全くもぅ。

Daizoに一緒に食べようと言います。

ウィスキー入りのゼリーなんぞ喰えるかとDaizoは嫌がります。

仕方ないので全部僕が食べました。

酔いました。

でも、さすがに酒入り珈琲は全部は飲めませんでしたけどね。



朝。

飲み過ぎて身体が動きません。

いや、実際の量はそんなでは無い筈なのです。

しかし、ゴミさんに入れられたという事実が何らかしらの魔力を高めたのでしょう。

Daizoも酒入り珈琲をほんの一口、ウィスキーを一口だけのくせに辛そうです。

晩飯後に化粧を必死に落としたそうで、顔はやつれてるだけでした。

―――だけ。

…間違ってる気がしてなりませんが、そんな感じです。

………

……



そんな感じなんです…

―――哀愁感漂いまくり。







この出来事は 2002/08/?? のもので、夏コミより後の出来事です。

それが今や早いモノで 2003/01/09 ですよ。

2002/11/08 の時点で原型は出来ていたのですが、今ひとつ納得出来なくて…

(主に僕が忘れたり、サボったりして徐々に徐々に…)

約、半年間も経ってしまっていたのです。

ゴミさん、遅くなってしまいホントすみませんでした。

―――UPして30分後にゴミさん直々に間違いを指摘されてウハウハです。

したコトの順番が違う、というのはちょっと修正不可っぽいのでそのままで。

まぁ、良いかと流して下さい。