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トレーサー

2002/03/04:久世紀弘







今日、今日ね…

やっちゃいました。

トレーサー。

情報処理用語で言う”トレーサー”とはこう書かれてます。

「プログラムの実行を追跡し、命令が実行される順番及び実行結果を出力する」

と。

別の名を「追跡プログラム」

どうです!?

僕はこんなにも高性能だったんです!

女の子をトレースするなんて!



後ろ右斜め横、二メートル半。

眼鏡っ娘の彼女は気付いてるのか無いのか歩くのが速めです。

初めはトレースするつもりは無かったのですけど。

ただ、急いで歩いてたら追いついてしまっただけで…

問題は彼女が眼鏡っ娘だという事で…

あ、取り立てて好きって訳じゃないんですよ?

あの眼鏡の縁の微妙なラインが妙に気になる、とか、自然な振る舞いが見てて飽きない、なんて事は無いんです。

気になったら実行する質なので、以前本で読んだことを試してみる事にしました。

・「人間は右に振り向くことは無い、左からだ」

・「もし相手が右後ろにいたら気を付けろ、君は追尾されている」

まぁ、こんな事が書かれてる本だったんです。

実際にやってみるとまた楽しいものです。

靴音を消し、バックの揺れも最小限に止めます。

そうやって素人忍者ヨロシク後を追うのです。

途中、彼女の足が速まりました。

気付いてしまったのでしょうか。

何度も靴とアスファルトが擦れる音が聞こえます。

これは焦っている証拠かもしれませんね。

勿論一定の距離感は保ってます。

そして歩調を合わせたりなんて危険な事はしません。

だって僕は歩いてるだけなんですから。

相手をどうするつもりも、…というよりは相手に興味が無いです。

自分のしている阿呆らしさが楽しいのです。

例えて言うならば、ロボットの玩具を遊ぶ子供のような所でしょうか。

「ズキューン、参ったかこのぉ」

「ぐぉ! 援軍か!? 儂等だって伊達にプロパイロットやってる訳じゃないぞぉ!!」

これはつまり、ロボットには興味が無いのです。

自分の世界に入ってしまった一人の孤独な少年。

そう、僕です。



………

……



はぁ、もっと真面目に勉強します。

因みに眼鏡の彼女は500m位経った辺りでマンションへと消えました。

道が違うのでサヨナラです。