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トリュフが怖い

2002/06/24:久世紀弘







漢字検定の試験が終わり、放課後。

普段より早く終わって、する事もない。



「少林寺サッカーでも観に行くか?」…紀弘

「良いねー」…D

「ぇー」…MST

「何処でも良いよ。」…hosea



今日のメンバーは4人。

全員で映画?

と思いきや、皆の財布は軽い。

学校の前で1時間ばかし立ち話をした後、行き先を決めることに。



「あじ○いに行こう!」<MST



不味い、不味いと有名なソバ屋。

彼とは前からその店に行こうと言う話がありまして。

是非ともその味をネタとして記憶したかったし、安いという点も魅力でした。

結果的に僕等はゾロゾロと男4人、店に入ったんです。

店の看板メニュー”あじ○い”を注文。

(…1人うどんに逃げた愚か者がいましたが。)

"あじ○い”は掛けソバに、油揚げ・揚げ玉、が入ってるだけのオーソドックスな物。

これならばその店本来の味も損なわれずに食べられるという訳です。

一口喰って思いました。



…やめときゃ良かった…



延びた麺は口の中でプチプチと切れる。

それでいてざらついた感じは、そう… 学食の据え置きを思い出させます。

…いや、それ以上かも。

汁の方はと言うと…

不味い、これに限ります。

見事に味を失った、そう、出汁を取り忘れて代わりに醤油を入れた感じです。

次、揚げ玉。

スープに入った瞬間に溶けてしまいました。

しかも、海老も何も入ってない… 更に油っぽいだけ。

油揚げ…

おいなりさんの使い回し。



どうでしょう?

hosea氏もげんなりとした顔です。

僕は… と言うと、箸が止まってしまいました。

不味い不味いと初めは笑っていたのですが、ある程度喰うとそれも出来なくなって。

苦痛です。

横にいたMSTは僕の顔を見て吹き出す始末。

麺が跳びましたよ。

失礼な奴です。



「漢顔になったよな。」…D



酷いこと言ってます。

僕は充分に苦痛を受けてるんです。

顔面蒼白になりながら耐えてる様はどんな感じでしょうね。

鏡持参じゃありませんから、自分の顔は解りません。

その代わり隣に座るMSTやhosea氏の顔がよーく解ります。

いやぁ… 皆美味そうに食べて… エッヘッヘッヘ。

Dはうどんに逃げてますが…

一同意気消沈して店を出ます。



「口直しするか…」…D



良いこと言った!

このまま帰っては後にトラウマに成りかねません。

Dが発案したのは、クレープ屋。

なかなか美味しいとの事です。

夏コミ前にお金を使うのは気が引けるのですが、自分の腹も可愛いです。

胃袋の中でソバのハーモニーが奏でられてる状態は、頂けません。

クレープ屋は小綺麗な感じで、調理場からは鮎の歌が流れてきます。

店員は今時の茶髪高校生。



(げ、オタかよ)



ん?



(何頼むんだよ、うぜぇなぁ)



何か聞こえますね。

目の前で僕等を見下す茶色い物体でしょうか。



「苺クレープ、クールで。」…D

「同じく。」…紀弘

「苺クレープ下さい。」…MST

「僕も苺クレープお願いします。」…hosea



(うぜぇええええええええええええええ!!!)



あ〜僕等には聞こえませんよ、そんな心の声。

悔しいからウンコ座りで対抗です。

男4人で苺クレープを喰って何が悪いんですか。

良いじゃないですか、オタだって。

偶にはこういった事もしたくなりますよ。

クレープの生地を乾かすときに鋭い視線が跳んで来たりと… ホント、オタって得するなぁ。



…お願いします、人間として扱って下さい。



出来上がったクレープは、そう… 花束のよう。

デートの前に贈るべき物… それを片手に4人並ぶんです。

サラリーマンが冷笑しています。

奥さんが白眼視しています。

でも、良いんです。

美味しそうだし。



「「「「カンパーイ」」」」…全



”カン”なんて音がする筈もなく、”ふにゃり”とクレープが曲がるだけ。

近くにある公園に腰を下ろします。

以前、Dとバームクーヘンを喰った時もここでした。

あの時は無○良品で買ったんだったっけ。

バームクーヘンは美味かったけど、一緒に買ったジュースが激しく不味かった…

死ぬ程甘いクレープを頬張りながら考えていました。



「あぁ!あの姉ちゃんケチりやがったな!?」…D



!!

これは見逃せません。

オタクだからって舐めたらあかんでぇええ!!

普段であれば筒の下の方まで生クリームが入っているそうです。



「まぁ、しゃーないっしょ。オタだし…」…紀弘



これで解決です。

ハンデを持っている以上、期待してはいけないのです。

ほら、僕ってあったまイー。



口直しとしては充分過ぎる程で、精神的にも一気に回復出来ました。

それは皆同じだったようで…



「甘い物も喰ったし、次は酸っぱい物行きたいね?」…hosea



”酸っぱい物”という時点で怪しい気がしますが、ネタとしては良いかもしれません。

ここまで来たんです、最後まで行っちゃいましょう。

…なんて、…あぁ、この時、誰も異議が出なかったのはある意味馬鹿ですよ。

不味い→美味い… と来たら、次は不味いに決まってるじゃないですか。



「じゃ、無○良品に行くか〜」…D



確かにあそこなら”酸っぱい物”がありそうです。

そもそもまともな食べ物を探す方が大変なのでは? とすら感じます。

口に付いた生クリームを拭い、いざ… チャレンジです。



「ぉ? なんだ、これ…」…紀弘

「ん? トリューフ!」…D

無○良品に来た僕等は、あれこれと物色していたんですが、今一コレと来る物がありません。

そんな中、怪しげな商品を発見しました。



《150円→100円》



そんな表記がされています。

トリュフの形をしたチョコレートでした。

思わず鷲掴み。

MSTとhosea氏にも強制的に手に持たせ…

はい、後はジュースだけです。



ミルク・カフェ…MST

ブルーベリージュース…D

アップルジュース…hosea

濃縮プルーンジュース…紀弘



取り敢えず、僕が一番間違ってる気がしてなりませんが…

こういうのは一番不味そうな物を選ぶと吉なんです。

不味いと見せかけて美味い…

これです。



公園に戻り、早速トリュフを食べることにします。

三つしか入っていませんでしたが、ちょっと美味しそうです。

皆、一斉に丸ごと口に詰め込み…



………



一気に血の気が引くのが解りました。

Dは悶えてます。

僕は余りの事に笑いが止まりません。

MSTとhosea氏は咳き込んでます。

どう表しましょうか…

”痛い甘さ”、”灼熱の粘土”…

非常に甘く、喉に絡み付くような感覚は未だ忘れられません。

そして全員が感じたこと。



不味い…



先程のクレープの幸福感は何処へやら… また逆戻りです。

箱を見やると…



原産国名:スペイン



………

口直しが必要でした。

ある意味、予定事項だったのでしょう。

彼らはストローを刺して飲み始めます。

ですが、僕のは缶だったので… ブルタップを外して…



むわぁ〜



グ!

凄い臭いがします。

少し酸味の効いた… そう、果実ですね。

もしかしたら美味しいかもしれません。

既に”普通に美味しい”なんて考える術は無く… ちょっと諦め気味です。

横目にhosea氏を見ると、トリュフ二個喰いなんて荒技をしています。

身体がしなってましたが…

さて、飲みます。



ゴク、ゴク…



二口分は、適度な量だと思います。

これでトリュフの甘みは取れます。

えぇ、取れました。

ドロドロの酸味で。



目頭を押さえたくなりました。

何で僕等はこんな事をしているんでしょう。

踏んだり蹴ったりです。

青汁並に危険じゃないですか!

心体共に疲労してしまいました。



「これ、飲んでみ…」…紀弘



後の事はご想像にお任せします。

此処まで来てアレですが… もう書くのも… はぁ。

でも、一つだけ言える事はあるんです。

これだけは誇れる点であると思い… たい。



…僕等は豪遊した…